2009年11月20日金曜日

2009年11月号

薄紅葉 櫨が入日に枝をのぶ  水原秋桜子


児島善三郎作「樋口付近」昭和21年 キャンバス小品 個人蔵






志村ふくみ 「冬青」


初冬 「赤」二題


善三郎の「樋口付近」は戦後すぐに耳納山麓の筑後平野の大きな櫨(はぜ)の木を描いています。櫨の木は木ロウが取れるため江戸時代から藩が奨励して植え付けられたそうです。九州に帰っても福岡市は空襲で焼け野原になり実家の児島本も消失していました。まさに「国敗れて山河あり」の心中であったろう事が小さな画面からもひしひしと伝わってきます。引用はまた秋桜子です、余程因縁が深かったのでしょうか。住んでいる国分寺市の商工祭りで、佐渡の姉妹都市から来た魚市に早朝から並び晩菜を求めた。向かい側の植木市にも足を展ばす。沢山ある庭木のなかに赤い可憐な実を枝先からぶら下げた冬青の木が目に飛び込んできた。「冬青」という志村ふくみさんの着物を所持しているので冬青(そよご)という木の名前と字を知っていた。先生が著作「母なる色」の中に冬青という一文を書かれているが、冬青は赤い実からではなく緑の葉から不思議なことに渋いピンクが染め上がるそうだ、桜や梅は花の色を蓄えている開花前の枝からピンクの色が抽出される、それは木の命を頂くことだと「一色一生」の中で書かれている。冬青のピンクをその特徴から「大人のピンク」「半音のピンク」「銀髪の婦人に似合うピンク」とたとえている。入日に僅かに残った紅葉を揺らせている櫨と冬青の可憐な実、静かな日本の秋から冬への風情が滲みわたってきます。二つの「赤」は漂泊の詩人や聖たちが、すべてを捨て去ろうとしながらも、目と心に焼き付いて離れなかった里の灯のようにも思えます。


市場から

11月21日のシンワオークションには一寸と興味が湧きます。際立った名品はありませんが、そこそこの梅原龍三郎のコレクションが22点一挙に出品されるからです。私どもの業界では、以前より洋画の梅原龍三郎と日本画の横山大観の絵が、その時々の相場のバロメーターとして注目されて来ました。その訳はといえば、まず名前がデカイ、どちらも長命だったせいもあり作品数が多い、昔からお金持ちが欲しがるなど理由は簡単です。梅原といえば、まずは「薔薇」、「冨士」、「浅間」が浮かびますし、もちろん良い時代の「北京」や「カンヌ」は有名です。あこがれた師がルノワールというのもなんとなくカッコイイ。画風からして金襴のドテラを着て松阪牛のスキヤキを食ってるっていう豪華さがあります。かたや、大観はなんといっても富士山と海に日の出、松と桜に紅葉の屏風と日本人が大好きな画題ばかり沢山あり、愛国心もくすぐります。その結果、この両大家の作品を両方扱う業者の数も多いという事になります。交換会(業者同士の市場)にはしょっちゅう出て来るし、相場が上げ潮のときは真っ先に上げるし、下げの局面でも結構実需に支えられ強いという結構な銘柄なのです。ですから、この両銘柄が売れないとか安く買えるというときは物凄く景気が悪いと思わなくてはいけません。とは言ってもお金持ちだって時代が変われば趣味も好みも変わるだろうとお考えでしょうが、まずほとんどこの五十年間は変わりませんでした。そんなこんなで21日の結果にはやはりひかれます。本心から言えばブレークして欲しいのかな、やっぱり。後は特にご報告するようなことはございません。



今月の新着


児島善三郎「林檎」SM 1946年頃





筒描「波兎」明治時代 145 x137 cm



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