2009年10月20日火曜日

2009年10月号



わがいのち菊にむかひてしずかなる  水原秋桜子



         児島善三郎作「菊」1942年 90.0×72.0cm 個人蔵



大型の台風18号と入れ替わりに秋の冷気が列島に降りてきました。この時期、昔ほどではないにしても農家や市内の家の門前に大輪の菊花や懸崖が並びます。丹精を込めた其の姿は美しい。佛花に供されたり、葉や茎の臭いのせいで嫌う人もいますが、日本人には又特別な意味を持って観照される花でもあります。善三郎がこの菊の絵を描いたのは太平洋戦争中の昭和17年です。先月号で述べましたように、この頃の善三郎は個性の放逐をお題目のように唱え、「スナヲニカク」という事を自身に果たしていたようです。前々年の紀元二千六百年奉祝美術展に出品された「松桜図」「武蔵野」や「涼風」に見られるおおらかさに比べて、この絵では写実性というか日本主義的というか時局の影響が強く感じられます。バックの根来朱にしてもそうですが、壺にしても主に中国や李朝のものを好んで使っていたのに、此処では赤絵の古伊万里を用いています。あたかも古武士が居合いの型で正面を切って、「さあ、どこからでも打ち込んで来い」と言っているような凄みが感じられます。戦争画を一点も描かなかった、静かなる愛国者のせめてものプロパガンダだったのかもしれません。冒頭の秋桜子の句もいつの時代に詠まれたものでしょうか。気になるところです。


市場から

9月25日の全美相の大会と10月15日の日本洋画商協同組合の大会の結果、ご報告するのを楽しみにしておりましたが、いつまで続く泥濘ぞという相場です。25日で目に付いたのは小磯良平の婦人像8号2200万円ぐらいで、後1000万円を超えたのは梅原一点だけだったと思います。
15日は一番高かったのがフォンタナのドローイングが380万円、香月泰男のアザミ小品が360万円、山口長男1954年3号が300万円といった具合でなんとも寂しい限りです。16日にNYのサザビーズ11月4日のメインセールのカタログが届きました。エスティメートで目を引いたのはカンディンスキー1932年の大作「ドラマチックアンドマイルド」の600万ドル、ピカソの1969年の120号「男の像」の800万ドル、ジャコメッティーのエトルスク風の針金のような彫刻が800万ドルなどで、あと日本円で1億から3億円はごろごろという感じです。これでも客付けのため下値は相当抑えてつけているでしょう。ビットが集中する作品は値を飛ばすことでしょう。円高メリットまだまだ利用できるのでは無いでしょうか。ご用命をお待ちしております。



今月の新着


                  
                      藍染着物 絞り、柳、干網文 130x139cm



江戸時代は固いところでしょう、綿の単衣ですが浴衣にはとても見えません。小袖のデザインといっても不思議はありません。しっかりとした絞りの技と一寸グレーがかった縹色が素敵です。






                     
                          山口長男 1954年「かたち」3号
 
山口長男先生の1954年の小品「かたち」

3号大のベニヤ板に油絵の具がしっかりのって描かれています。このスタイルが出来上がった時期の作品です。本人の字で「かたち  昭和二十九年七月 山口長男」と裏書があります。山口先生には開業早々に水彩と油絵の展覧会をお願いしたこともありとても懐かしく感じます。 個人的には児島の児の字の象形のように見え大変気に入っています。


 

 

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