「目を細め青麦の風柔かし」 富安風生
児島善三郎 「麦畑」 10号 1952年頃 個人蔵
国分寺から荻窪へアトリエを移して間もない頃の作品でしょうか、新しい画風を模索し大胆な挑戦をしています。国分寺では野川の河岸段丘を挟んで田圃が広がり、アトリエのあった高台からの鳥瞰的構図や川沿いまで降りていって地べたすれすれの狙撃兵のような目線などさまざまなアングルが自在に使えましたが、新しいアトリエの周りはただなだらかな斜面が続く欅や橡の大木を除けば空ばかりが大きな、絵にするには難しい地勢でした。この絵は写真でいえばかなり短いタマ・広角レンズで地べたすれすれから狙った構図です。そのままなら遠景の家々や木々はずっと小さくなってしまうことでしょうが、そこは絵では何とでもなります。正確にはわかりませんが、この時期には画壇ではもう抽象画がかなり多くなっていたと思います。1960年ともなれば具象画はまことに肩身の狭い思いを強いられる事になります。この絵も画面下三分の二はほとんど抽象画といっていいでしょう、ナバホインディアンの毛布のダズリング模様のようにも見えます。常に新しい日本の油絵の創出を標榜してきた善三郎は躊躇いません。この後もミモザの花や熱海夜景でこの試みは生かされてゆきます。富安風生はホトトギス派を代表する俳人で高浜虚子の門人です。構図を狙っている時の善三郎の姿が目に浮かぶ句です。
市場から
3月は15日の洋画商協同組合、25日の全美相と交換会の大会が続きました。大会とは会員だけでなく招待者も呼んで、なるべく名品を持ち寄って出来高を伸ばうという試みですが、最近のように月例会の出来高が細くなっているときには勢い期待が高まります。種々の経済指標や株価は一時より大分よくなって来ているようですが、美術市場は薄日が差し始めたかどうかといったところです。両大会とも出来高は最盛時の四分の一といったところです。一千万円を超える商品もほとんどありません。号外でお知らせのようにニューヨークへ久々に行ってまいりましたが、彼の地でも冷え込みは依然続いているようです。チェルシー地区の画廊街を初めて訪ねてみましたが、人影はまばらな上、有名な画廊を覘いても展示はまったくお粗末な内容です。スター不在の中、学級崩壊を思わせるアートシーンでした。でも、二つだけ素晴らしい出会いがありました。一つ目はダミアン・ハーストやムラカミで話題を集めたガゴシアンギャラリーでアメリカ彫刻界の最高峰デイヴィッド・スミスの展覧会が開催されていた事です。もう一つは名前を覚えていない画廊でですがジャクソン・ポロックの10号の油絵、ドリッピングになる少し前の作品に出会ったことです。思わず作品の前で釘づけになってしまい、値段まで聞いてしまいました。スピードと刺激から、見応えのある作品へと保守回帰は確実に広がってきています。
今月の新着
福井良之助「晴着」6F
先月に続き福井先生です。正当に評価される日は近いと信じています。「舞妓」と「雪景」どちらも人気図柄です。
株式会社 兒嶋画廊
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TEL&FAX 03-3401-3011
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